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インタビュー ベアレン 文化祭

【リトルもりおか文化祭ゲストインタビュー・1】盛岡の食卓に多様なビールの選択肢を ベアレン醸造所・嶌田洋一さん

 
12月12日に開催されるリトルもりおか文化祭。「異彩、多彩、断然、盛岡。」をテーマに、盛岡に関わる数多くのゲストにご登場いただきます。当日への期待を高めていくため、文化祭を盛り上げてくれるゲストの方々の中から、リトルもりおか編集部が特選したゲストを紹介するインタビュー記事を3回続きでお届けします!
 

盛岡が誇るクラフトビールといえば、きっと誰もが口をそろえて「ベアレンビール」と答えるでしょう。それくらい、盛岡市民にとってベアレンビールは身近な存在になりました。それはもちろん、盛岡を離れて暮らす私たち首都圏のモリオカンにとっても同じことです。
リトルもりおか文化祭・ゲスト紹介記事の第1弾は、盛岡とともに歩むクラフトビールメーカー・株式会社ベアレン醸造所。専務取締役の嶌田洋一さんにお話を伺いました。
リトルもりおか文化祭では、ベアレンビールを生産する盛岡市の北山工場のオンライン見学会を開催していただきます。しかも、嶌田洋一さん自らご案内いただける予定!となっております。 ベアレン醸造所立ち上げの経緯、地域密着への熱いこだわり、そして世界に向けられたビジョン……知っているようで知らなかったベアレン醸造所を徹底紹介します。
 

慣れ親しんだ東京を離れ、第2の青春の地・盛岡で起業

――ベアレンビール誕生までの経緯を教えていただけますか。
2001年に会社を設立しました。社長の木村(剛さん)が、盛岡で新たにビール会社を立ち上げたいということで、木村と私とドイツ人のマイスターの3人で起業しました。個人でお金を出し合い、あとは銀行融資でやってきたので、工場建設や免許関係で最初は資金繰りに苦労しました。ビールを造り始めたのは2003年で、ベアレンビールの誕生から今年(2020年)で17周年になります。

――嶌田さんは、ご友人だった木村社長に誘われ、脱サラしてベアレン醸造所を起業したとうかがっています。起業を決断した理由は何だったのでしょうか。
もともと独立願望はありました。以前の会社に勤めていたころから、いつか起業して自分の力を試してみたいという漠然とした思いがあったんです。普段から木村と話をするなかでも、いずれ起業を持ちかけられるのではないかという予感もあったので、誘われたときもあまり迷いはありませんでした。飲み会や遊びに行くような感覚で、「いいね。やろうよ!」と起業に賛同しました。

――ベアレン醸造所を盛岡で起業した理由を教えてください。
木村の出身が盛岡だったことが大きいですが、実は私と木村が出会ったのも盛岡なんです。前職の最初の赴任地が盛岡で、私はお酒の営業をしていました。木村も他社でビールの営業をしていました。2人ともお酒や食べることが好きで趣味が合い、よく遊んでいました。
そういうわけで盛岡は当時の得意先も多かったため、起業にあたっては地の利を生かせるという狙いもありました。 私は東京出身で、大学も東京でした。新卒で赴任した盛岡での4年間が、東京以外で生活した初めての経験だったんです。盛岡で過ごした時間は第2の青春のようなもので、とてもいい思い出が残っていました。ですから起業して盛岡に戻るということに抵抗はありませんでした。
 

ベアレンビール本社北山工場仕込み室とビール

 
――盛岡でベアレンビールの事業をしてきて良かったことや、逆に苦労されたことはありますか?
盛岡はほどほどの都市規模があり、それがちょうどよかった。あまり小さい街では事業が厳しかったでしょうし、大きすぎても難しい。起業時から「地域密着でやっていこう」と決めていたので、その意味で盛岡の規模感はちょうどよかったと思っています。

私が感じる限りでは、盛岡には食べ物や飲み物にこだわりのある人が多くいます。そうした市民性も、地域密着のビール会社にはプラスだったと思います。 苦労した点で言うと、これは特段盛岡だからというわけではありませんが、私たちはクラフトビールが売れない時代に起業しました。ですので、クラフトビールに対するネガティブな印象をどうにかする必要がありました。現在はいろんな種類のクラフトビールが普及していますが、当時はクラフトビールというというだけで拒否されました。美味しくないビール、(悪い意味で)変わったビールというイメージだったんです。それを払拭して、さまざまなビールを飲み比べるだとか、味わいの異なるビールを楽しむことを浸透させていくのに苦労しました。
 

「ビールにも、味わいを楽しむ選択肢が必要だ」という使命感

1990年代後半にいちどクラフトビールのブームがあったんですが、このときに「キワモノ系」と世間に捉えられてしまった感があり、実際に品質的にもあまり良くないものが多く出回りました。ブームが去ったとき、多くの人にとってクラフトビールは「値段が高くて美味しくないキワモノ系」というイメージになってしまった。ベアレンビールが世に出始めた2003年ごろは、クラフトビールのイメージがどん底に近い時期だったと思います。

――かなりの逆境に思えます。そのタイミングで起業するのは勇気が要る決断ではないでしょうか。
タイミングを見計らって、「これから売れそうだから」とクラフトビールをやろうという感覚は全くありませんでした。逆に「世間のイメージが悪いからやろう」とも思っていませんでした。時流は関係なく、やりたかったことを自分たちのタイミングでやり始めただけなんです。厳しい時代だったのはたまたまです。むしろ「なぜクラフトビールは飲まれないのか?」という疑問から事業に入れたので、結果論ですがその点は良かったと思います。「じゃあどうすればいいのか?」と考えることができましたから。
 

工場での仕事風景

 
「いまこれが流行っているからやってみよう」という考えで起業すると、恐らく事業が軌道に乗るころには流行遅れになっている。トレンドを捉えようとしたら、「いま流行っていないもの」や「これから流行りそうなもの」で起業した方がいいのだと思います。ベアレンの例で言えば、20年前起業したときに「これからクラフトビールの時代が来るぞ」と予想していたというよりは、「クラフトビールの時代は必ず来なくちゃいけない!」と考えていました。「ビールの選択肢が大手4社だけでいいのか?」という強い思いがあり、「ビールにも、味わいを楽しむ選択肢が必要だ!」という使命感にあふれていたんです。

――「ビールの世界にも多様な選択肢を」という願いがあったわけですね。
ビール以外のお酒も好きでいろんな種類を飲み比べました。いいお酒を選んで飲む喜びを感じる中で、ビールの世界だけ選ぶ喜びが少ないのはおかしいと思っていました。「ビールにも選択肢があっていいし、普段より少し良いお酒を選んで飲む贅沢な時間は絶対必要だ」と思っていたのです。 自分たちのビールの品質には自信はありますが、何が何でもベアレンビールだけを飲んでほしい、とは思っていません。「ビールが飲みたい」と思ったときに、ベアレンビールという選択肢を多くの方に持ってもらうことが大事なんです。
 

盛岡を訪れて、世界観ごとベアレンビールを楽しんでほしい

――現在は東京でもベアレンビールを購入できるお店がありますし、県外からもたくさん注文があるかと思います。ベアレン醸造所にとって、県外のベアレンファンはどんな存在なのでしょうか。
私たちはずっと地域密着で県外にはあまり出さないスタンスでやってきましたが、そんな時代から県外のお客様はベアレンを支えてくれました。その方々にとってベアレンビールは、単なるビールというより、自分が住む土地と盛岡をつなぐ存在なのかと感じます。県外のお客様には、これからもぜひ実際に盛岡を訪れてもらって、各地と盛岡をつなぐ存在になっていただきたいと思います。

――旅行などで盛岡を訪れてベアレンファンになる人も多いのでは?
多いと思います。転勤で盛岡に来てベアレンビールにハマり、盛岡を離れた後も定期的に盛岡を訪れてくれる、というパターンをよく耳にします。そういう方々からは「イベントのチケットを購入したいので、先々の予定を教えてください」というお問い合わせをいただきます。
 

べアレンビールは各種のイベントも人気

 
――その方たちにとっては、ベアレンビールが盛岡を訪れる理由の1つになっているんですね。
そうですね。もちろんそういう方々は、通販などでもベアレンを飲んでいただいています。しかし盛岡を訪れてベアレンビールを飲むことには、また違う良さがあると感じていただいていて、それこそが大事なのだと思います。つまり盛岡で、ベアレンビールの世界観を味わってもらえているのかなと。盛岡という土地だったり、食べ物であったり、人であったり、いろんなものがトータルでベアレンビールの世界観を作っています。それはベアレン醸造所が地域密着でやってきたからこそ生まれたものだと思うので、私たちにとっては大事な財産です。

――現在、全国各地にクラフトビールのブランドが生まれて、ブームと言っていい状況だと思います。ほかのビールと比べて、ベアレンビールならではのこだわりはどこにあるのでしょうか。
やはり地域密着の姿勢です。地域の方々に飲んでもらったり、地域の方々とともに醸成していくビール文化、というのが最大の特長です。盛岡からスタートして、いまでは岩手県全体に密着してやっていこうと考えています。ここまで地元の方々に知られて、ご支持をいただいているクラフトビールのブランドは、ほかにはなかなか無いはずです。全国のクラフトビールを飲み歩いているお客様からも、「盛岡は街の雰囲気がほかとは違う」と言っていただくことがあります。それは盛岡・岩手のお客様に、ベアレンビールが選択肢として受け入れていただいているからだと思います。
 

 
――リトルもりおかは、盛岡にゆかりのある首都圏の20~30代のコミュニティです。ベアレンビールの商圏としての可能性はいかがでしょうか?
可能性はあると思います。お客様の年齢層は40~50代が中心ですが、若い方たちにもベアレンをもっと楽しんでもらいたいという希望は持っています。

マーケティングを長くやってきて思うのは、若者に飲んでもらいたいからといって、最初から若者受けを狙った商品を作るのは正しくないということです。そうではなくて、私たちベアレンビールの世界観を、若い人にどうやったら理解してもらえるかを考えることが必要なのだと思います。つまり、重要なのは伝え方なのではないかと。私たちのやりたいことの延長線上で見せ方や伝え方を工夫し、若者にもベアレンの良さを知ってもらえれば、それはとても嬉しいことです。

――今回の文化祭ではヘラルボニーさんにもご出演いただきますが、ベアレンビールにはヘラルボニーさんとコラボレーションした特別ラベルもありましたよね? さまざまなコラボ商品がありますが、どのような狙いがあるのでしょうか。
ベアレンビールの世界観を崩さない限りは、積極的にコラボレーションしていきたいと思っています。コラボには切り口が大事です。クラフトビールの市場を今後広げていくためには、一辺倒なやり方を続けていては広がる範囲は限られてしまいます。新たなお客様の層を切り開いていくためには、コラボのような新たな切り口が必要です。あくまでお互いの世界観に共感し合える範囲で、ですが。ヘラルボニーさんとのコラボでいえば、これまでどちらか片方しか関心の無かった人が、もう片方の良さを知る機会にもなったと思います。
 

 

盛岡のビール文化をさらに深め、ビールを通じて全国・世界と結ぶ

――ベアレンビールにとってライバルのような企業やブランドはあったりするのでしょうか?
お酒ではありませんが、強いて言うならば、盛岡三大麺(冷麺、じゃじゃ麺、わんこそば)や福田パンとはともに切磋琢磨しながら、盛岡の地域ブランドを盛り上げていきたいと思っています。県外の人が「盛岡」と聞くと、やはり盛岡三大麺や福田パンを連想する人が多いでしょう? 「盛岡といえばベアレンビールだよね」と多くの人に名前を挙げてもらえるようなブランドにしていきたいですね。

――ベアレン醸造所にとって、盛岡とはどんな土地でしょう?
私たちにとっては創業の地ですし、非常に重要な土地です。ベアレン醸造所はクラフトビールの会社ですが、地域密着で盛岡を元気にしよう、盛り上げようという企業カラーでやってきました。私たちがこれまで作り上げてきた世界観は、盛岡という土地があってのことです。最近は県外や海外にも販路を広げていますが、最終的には盛岡市外・岩手県外からもいろんな方に盛岡に集まっていただき、ベアレンビールを楽しんでいただくことを目指しています。もっともっと盛岡という地域のビール文化が盛んになり、ビールを目的に盛岡を訪れる人が増えるといいなと思っています。現在は新型コロナウイルスの感染拡大で移動が不自由になっているなど、その時々で事情はあるかと思いますが、方向性としてはそういう世界を目指していきたいのです。

――これから先のビジョンなどがあれば、ぜひ教えてください。
盛岡という地域に密着したビール文化をもっと深めていきたいと思っています。現状が完成形だとは思っていませんし、ビールの楽しみ方はもっともっとあるはずです。そういったものを地元でさらに作っていきたいですね。同時に、全国各地や世界各地への販路も拡大していくつもりです。最終的には、ベアレンビールを送り出した各地と盛岡が結びついて、実際に盛岡を訪れて盛岡の食やビールを含めた世界観を味わってもらえるとうれしいです。地域密着と外への展開の両面で頑張っていきます。
 

北山工場の仕込み室

 

オンライン工場見学で、ベアレンビールが生まれる現場を見よう!

――12月12日のリトルもりおか文化祭では、盛岡市の北山工場見学会をオンライン上で開催していただきます。当日は嶌田さん自らご案内・ご解説していただきますが、見所を教えてください!
当日は、ドイツから移設してきた100年以上昔の設備などを見ていただけます。日本ではなかなか見られないクラシカルな設備、そしてベアレンビールが生まれる現場を見ることができる点をぜひ楽しみにしていただきたいです。なるべく製造現場の雰囲気が伝わるよう、私も頑張りたいと思っています。今回オンラインで見学していただいた方に、いずれ実際に盛岡の工場を訪れてもらえると嬉しいです。

――当日はベアレンビールを飲みながら見学します! 貴重なお話をありがとうございました!


ベアレンビールのオンライン醸造所見学を楽しめる!
リトルもりおか文化祭〜異彩、多彩、断然、盛岡。〜のオンラインチケットは下記URLよりお申し込みください。
 URL: https://moriokabunkasai.peatix.com/

画像提供:株式会社べアレン醸造所
聞き手:シュン


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